KEYENCE

商品開発

Product Development

キーエンスの
エンジニアは、
どう挑んだのか。

ハンディターミナルBT 編

自動認識事業部
能見 大河

序章入社2年目。いきなり商品の心臓部を任された。

「えっ、私ですか!」。若い社員に重要案件を任すことが多い会社だとは聞いていた。まさか自分にそのチャンスが回ってくるとは!その時、能見に与えられたテーマは、世界最高水準のOCRのアルゴリズム開発。読み取った文字を認識しデータ化する機能の心臓部分だ。OCRは製造や流通業界などから多くの期待を集めていたものの、“本当に使える”精度をもつ商品は実用化されていなかった。あふれる情報を整理しながら効率よく活用できるものをつくれば、現場に革命を起こすことができる。どうすればその先頭に立つことができるだろうか。

第一章既存の方法で無理ならば、創るしかない。

製造・流通現場で管理すべき文字は実に様々。さらにその読み取り精度は、フォント、印字方式、文字サイズ、さらには照明の明るさ強さなどの環境要因にも影響を受ける。またアルファベットのОと数字の0の違いも正しく識別しなければならないし、どんな角度でも安定して読み取れなくてはならない。やるべきことは、多岐にわたる。わかったことは、ひとつ。これまでの概念や方法論では、“できない”ということだ。できないものは、一から創らなくてはならない。超えるべきその壁の高さに、正直震えた。

第二章認識率99.8%。しかし、まだ足りない。

世界中の様々な論文を調べ、様々なアルゴリズムを新たに考案し、それを実装してテストを繰り返す毎日。その結果、テスト評価で99.8%もの認識率を達成。読み取りスピードも満足いくものとなった。「よし!いける!」。満を持して、試作モデルをもってお客様の元へ。しかし、評価は散々。使用される現場の照明は想定したよりも暗く、読み取らせたい文字も難解。お客様からは「こんな悪環境下でも私には文字がちゃんと認識できる。人間の目と同じくらいOCRでも読めないと使えないよ」と言われた。要求は思ったよりも高い。ただ、そのお客様の思いにヒントはあった。「人が読める」ということは何らかの行動を伴っている。そこに法則やルールがあるのではないか?それを突き詰めれば、解決の糸口がきっとある!

第三章「そうか、わかった」。逆転の発想。

そこからは答えを探す日々。正確な海図を持たずに大海に乗り出した船乗りのような毎日。能見はアルゴリズムのメンバーだけでなく、ハードや構造など他のメンバーからもたくさんの意見やアイデアをもらった。さらにお客様の所に何度も出向き、自由に意見をもらった。その中でたどり着いた答え。それは「誤読したら人に任せる」という発想の転換だった。つまり、99.8%まで高めた読み取り精度から零れ落ちた「光沢で文字が白飛びする」、「印字が薄くて読めない」などの0.2%の誤読をパターン化。そこに精巧なアラート機能を組み込んだ。つまり、誤読したことを検出して人にお知らせし、ごくわずかに起こる0.2%の誤読については人にカバーしてもらうという考え方。

第四章勝利の瞬間とモノづくりの満足感。

こうして改善した商品をもってお客様の元へ出向いた。使っていただく。その第一声。「これは使える!」。これまでOCRの活用に乗り気でなかったお客様が導入へと踏み切っていただいた瞬間だった。まさに世の中のありようをキーエンスの商品で変えたのだ。もちろん、これは一人の力だけで得た変革ではない。プロジェクトチーム全員で試行錯誤を繰り返し、見えない答えを求め続けた結果だった。誰も思いもつかなかった発想が、我々を成功に導いた。キーエンスがつくるモノの性能は常に最先端。でもそれは現場で使えてこそ、最先端なのだ。

終章困難の先にあったのは、付加価値を生み出す喜び。

これまでにないアルゴリズムの開発の成否には、筋の良い“技術”を選ぶセンスと現場にこだわる考え方がカギを握った。さらにエンジニアがどんな難問にも挑戦を楽しむことができる社内環境があるからこそ、入社二年目の若手であっても前向きかつ全力で取り組むことができた。この後も能見は数々のプロジェクトでアルゴリズム開発に携わり、努力と経験と実績を積み重ねながら自身の技術力に磨きをかけていった。そして、データ分析の世界では知る人ぞ知る人物となり、データアナリティクスの部門に異動する。活躍するステージは変わったが、アルゴリズム開発を通して、モノづくりの喜び、この世になかった付加価値を生み出す喜びを感じる日々は変わっていない。 それが、キーエンスで働くということだからだ。