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Story 04

Story 04

急事であっても、当日出荷を守り抜く

必要なときに、すぐにお客様の元に届く。
このスピードも、付加価値の源泉。

Special その「夢中」が鍵だ。

Story 04 夢中の先に得られたもの

  • Shuji Kishimoto

    岸本 修治

    生産管理部門 物流担当 入社10年目(2021年4月取材当時)

    「フラットな社風」に魅力を感じ入社。入社後、資材調達、生産工程管理の経験を積んだ後、2015年に現部署に異動。2019年よりチームリーダーに。責任を与えられ、さらに仕事が楽しくなったという。

Special

Scene
1

コロナ禍で航空便のスペース難が発生。 その時、ロジスティクス担当が 抱いた思いとは?

2020年1月頃からはじまったコロナ禍は、春過ぎには世界的な広がりを見せ、その影響で各国向けの旅客便が大幅減便、あるいは全便キャンセルとなった。航空便を使って、国内のみならず海外現地法人(海外現法)へも当日出荷を実現しているキーエンスにとって、航空便のスペース難は頭の痛い事態だ。「なんとか乗り切らねば」。全世界への“当日出荷”を担う、物流担当のチームリーダー、岸本はそう腹を決めた。

当日出荷とは、お客様から注文を受けた商品をその日のうちに出荷し、すぐにお手元に届けるという、キーエンスが大きな強みとしているビジネスモデル。お客様の生産ラインの効率化を実現するキーエンスの商品は、納品を早めれば早めるほどお客様に大きな価値をもたらすことができる。一方、商品が届かなければ、お客様の生産ラインはストップし、大きな損失につながる。だからこそ、いかなる外部要因が発生しようとも、当日出荷を維持する。それが岸本たちの矜持である。

その後、世界中の物流が逼迫していく中で、岸本たちは都度タフなネゴシエーションを通して、当日出荷の維持に努めた。いまだかつてない危機的状況。その時、彼の頭をよぎったのは、2018年9月の台風21号の際の経験だった。「あの時、乗り切れたのだから、今回の危機もクリアできるはずだ」と。

Scene
2

2018年、海外売上比率が急激に伸長し、 出荷量が急増。 ロジスティクスのさらなる進化へ。

それは、岸本が物流担当になって4年目のことだった。暴風で流されたタンカーが関西国際空港の連絡橋に衝突し、同空港が閉鎖、物流網が寸断された。岸本はフォワーダー各社(航空会社のスペース確保を担う輸送業者)と打ち合わせをし、代替手段の手配に奔走。しかし、その間も世界中の拠点からは、「出荷はどうなっているのか?」と毎日のように問い合わせが入り、それらへの対応にも追われる。2か月間弱、少しでもボタンを掛け違えば、“当日出荷” が危うくなるという厳しい中で、彼は当日出荷を守り切った。「自分がキーエンスの商品を世界中に届けているという責任を持って取り組んでいたので、ホッとしたし達成感も覚えました」。

台風に見舞われた2018年。それは、ロジスティクスグループにとっても岸本にとっても、ターニングポイントとなる重要な年であった。「この年、キーエンスの海外売上比率が急激に伸びてきて出荷量が急増。キーエンスでは出荷から航空機への搭載まで物理的な最短リードタイムを実現していますが、従来のやり方では早晩、当日出荷が維持できなくなるのは目に見えていました」。そこでロジスティクスグループとして、それを回避するための方策を模索しはじめた。「体積速報」の導入はその一つ。それは、フォワーダーへ日々の出荷量を早期発信する仕組みであり、これによりフォワーダーはより迅速、効率的に航空会社のスペース確保を実現できるようになった。また、航空会社との契約のプロセスの見直しにも尽力した。そんな中、岸本はあるアイデアを思いつく。……それが後にコロナ禍の中での当日出荷厳守の原動力の一つとなるとは、この時の彼は知る由もなかった。

Scene
3

「実現するのは難しい」。 逆風の中、思いを貫き導入を果たした 新しい仕組み。

岸本が思いついたのは、それまで1現法につき1フォワーダーしか使えない仕組みになっていたのを、1現法につき複数フォワーダーを使い分けるようにする仕組みの導入だ。「競争環境を生むことで、『一部の物量であれば安く、またリードタイムを伸ばすことで安く』といった、従来の仕組みでは採用できなかった条件でも柔軟に採用できるようになると考えたのです」。

しかし、彼の思いに反して、周囲からは「難しい」という反応ばかり。「まず、仕組みを大きく変えなければいけなくなるが、それは果たして実現可能なのか? たとえば、複数のフォワーダーを使うとなると、『どの航空会社を使うのか、この荷物がいつ現地法人に届くのか』を瞬時にわかるシステムが果たして構築できるか。また、航空機搭載へのごく短いリードタイムの中でどうやってどのタイミングで、複数フォワーダーに振り分けていくのかと」。

彼にも簡単ではないことはわかっていた。だが、今変えたことを良かったと思う日がきっと来る。その信念のもと、その必要性を訴え続けた。「先ほどお話しした『体積速報』と同じように、『1現法・複数フォワーダー』もいずれは、これなくして当日出荷は考えられない仕組みになるのだと。逆風の中、そこは自信を持ってめげずに周りに発信しました」。そして、コロナ禍以前の2019年半ばからアイデアを揉み、その年末には社内のICT部門と連携し、「1現法・複数フォワーダー」を実現するシステム開発に着手した。

ここで冒頭の場面に戻る。2020年1月、コロナ禍がはじまった頃、岸本はシステム開発を推進中。その後、彼は1年間をかけてシステムをつくり上げ、2021年1月にシステム導入に至ったのだった。

Scene
4

刻々と変わる状況の中、 その時々に合った最適な対策を 見極めていく。

2020年春、コロナ禍がはじまって数か月。岸本たちは、新たな打ち手も模索していった。「コロナ禍以前なら、フォワーダー各社との契約内容見直し、条件の見直しは、基本的にスケジュールの変わり目となる年2回でした。しかし現在は、毎月相場価格をタイムリーに把握、また1社に依存することなく、複数社の選択肢を持てるようにしています。さらに、すべての海外現法への出荷につき、毎月10社程度に見積もりを依頼し、費用対効果を最大化する努力を続けています」。

そんな中、最もコロナ禍によるダメージを受けていたのはメキシコ現法だった。「メキシコの航空会社エアロメヒコ航空が6月に倒産した余波で、メキシコ向けの航空運賃が高騰していました。そこで、『1現法・複数フォワーダー』を今こそメキシコ現法に導入すべきだと……」。彼の目論見は当たった。コロナ禍がはじまってから1年弱。メキシコ現法からは毎日のように、「出荷」についての問い合わせメールが相次いでいた。それが、『1現法・複数フォワーダー』システムを導入して激減したのだ。そして、キャパシティも大幅アップ、航空運賃のコストダウンも果たした。次は台湾、アメリカへのシステム導入を予定している。

今もコロナ禍対応は続いている。その中で岸本はつくづく、「変化に柔軟になること」の重要性を感じている。状況が刻々と変わる中でその時々に合った適切な対策を打つ。それが“当日出荷”を守り切る最短ルートなのだと。「キーエンスが成長を続ける中、今後も間違いなく出荷量は増えていくでしょう。そうなった時にどう対応するか? 今後のキーエンスの成長を支える新たなロジスティクスの仕組みをつくることは、我々のチームにしか実現できないこと。だからこそ、どんな困難があっても達成したいという熱い思いが湧き上がるんです」。